2025年1月 須賀川拓先生

 2024年は、中東情勢を巡り歴史に残る大事件が続きました。イスラエルによる侵攻はガザだけでなくレバノンにまで及び、地域の人道危機が拡大の一途をたどる中、イランとイスラエルの直接対峙は、周辺大国を巻き込んだ大規模な戦争の懸念を再び呼び起こしました。さらに12月には、欧州難民危機を生んだシリアで半世紀に及んだアサド一族による独裁政権が崩壊し、21世紀に目撃することはもうないだろうと思われた、恐怖政治による「絶滅収容所」の実態が明るみになりました。

 いま起きているシリア情勢の引き金を引いた要因の一つは、まぎれもなく諸外国勢力の影響力低下や、地域におけるアメリカのプレゼンスの低下です。遠い国で起きている話に聞こえますが、戦争というのは地続きで、シリア情勢、ウクライナ情勢、イラン情勢、ひいては北朝鮮情勢は、必ずどこかで繋がってきます。中東や東欧の混乱が、東アジアの安全保障に直接影響を及ぼす時代になってきているのです。

 激動の2024年を経て、2025年はどんな年になるのか。日本という国の立ち位置はどうなるのか。そしてメディアとして、どのような媒体で、どのようなニュースコンテンツを視聴者に提供していく必要があるのか。国際情勢をめぐる議論だけでなく、いまのメディアに足りないものが何なのかを、是非一緒に考えていきたいと思います。

講師 須賀川拓(スカガワヒロシ)

 2006年TBS入社。2010年に報道局へ所属し、2019年から中東支局長。2023年からTBSnews23専属ジャーナリスト。テレビ以外にもSNSやYouTube、映画などでも積極的に発信している。制作した映画は「アフガン・ドラッグトレイル」「BORDER 戦場記者xイスラム国」など(いずれも(AmazonPrimeにて配信中)。2022年、国際報道で優れた業績をあげたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。同年、紛争地帯の現状を伝えるドキュメンタリー映画「戦場記者」が全国で劇場公開された。TBS系の紀行バラエティ「クレイジージャーニー」にも不定期で出演。テレビでは伝えきれない紛争地の現状を媒体問わずに発信を続けている。

日時:1月23日木曜日

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